マスコンクリートとは
マスコンクリートとは、部材や構造物の寸法が大きく、水和熱による温度上昇が著しいため、ひび割れなどの影響を考慮して設計・施工する必要があるコンクリートのことです。
📏 寸法の目安(コンクリート標準示方書より)
- スラブ:厚さ80~100cm以上
- 下端が拘束された壁:厚さ50cm以上
🌡️ 温度ひび割れとは
温度ひび割れとは、コンクリートの温度変化(膨張・収縮)が妨げられることによって発生するひび割れで、主に以下の2種類に分類されます。
①内部拘束によるひび割れ
水和熱により「高温になる部材内部」と「外気で冷やされる表面」の間に温度差が生じます。
内部の膨張に対し、表面のコンクリートが引っ張られる形となり、初期段階で表面にひび割れが発生します。

②外部拘束によるひび割れ
温度上昇のピークを過ぎ、コンクリート全体が冷却されて収縮しようとする際、強固な地盤や既設構造物に拘束されて自由に縮むことができず、大きな引張力が発生して貫通ひび割れが生じやすくなります。


💡 イメージしてみよう
上図のように下端が拘束されている状態は、「全体が冷えて縮みたいのに、足元をガッチリ固定されて縮めない」状態です。そのしわ寄せ(引張応力)がコンクリートの限界を超えると、ひび割れとして表面化します。
温度ひび割れ抑制対策
温度ひび割れを防ぐためには、計画段階から「配合・打設・養生」の3つの視点で対策を講じる必要があります。
① 配合に関する対策
- 低熱型セメントの使用: 低熱・中庸熱ポルトランドセメントや、混合セメント(高炉セメントなど)を使用して水和熱を抑える。
- セメント量の削減: 粗骨材の最大寸法を大きくし、必要な単位セメント量を減らす。
- 水量の削減: スランプを小さく設定し、単位水量と単位セメント量を抑える。
- 混和剤の活用: 高性能AE減水剤や流動化剤を活用して、流動性を保ちつつ水・セメント量を削減する。
② 打設に関する対策
- プレクーリング: 練り混ぜ水に氷を使用したり、骨材を冷却したりして、コンクリートの「練り上がり温度」を下げる。
- リフト割りの工夫: 1回の打ち上がり高さ(リフト高)を低くし、熱を逃がしやすくする。
③ 養生に関する対策
- 型枠の存置: 内部温度が最大に達した後も型枠を残し、内部と表面の温度差を急激に広げない(保温する)。
- 表面の保温: 断熱型枠や保温シートで表面を覆い、急冷を防ぐ。
- パイプクーリング: コンクリート内部に冷却水を通すパイプを事前に配置し、強制的に内部温度を下げる。
温度ひび割れ指数(Icr)による評価
温度ひび割れの発生リスクを定量的に評価するために、「温度ひび割れ指数」という指標が用いられます。この値が大きいほど、ひび割れのリスクが低い(安全である)ことを意味します。
$$I_{cr}(t) = \frac{f_{tk}(t)}{\sigma_t(t)} \geq \gamma_{cr}$$
- \({f_{tk}(t)}\):材齢 t 日におけるコンクリートの引張強度
- \(\sigma_t(t)\):日における最大主引張応力度
- \(\gamma_{cr}\):ひび割れ発生確率に関する安全係数
つまり、「コンクリートが耐えられる力(引張強度)」÷「コンクリートに発生する力(引張応力)」で安全性を評価します。
2023年版コンクリート標準示方書【設計編】の新しい考え方
2023年制定の土木学会コンクリート標準示方書【設計編】では、温度ひび割れの評価に「確率論的なアプローチ」が導入されました。
新しい設計指針では、以下のパラメータ等を用いてひび割れ発生確率をより詳細に評価します。
- \(Z_0\):目標とするひび割れ発生確率に対応する標準正規分布の $Z$ 値
- \(V_R\):引張強度の変動係数
- \(V_S\):引張応力の変動係数
※示方書(331ページ等)には、「安全係数\(\gamma_{cr}\) とひび割れ発生確率の関係図」や、「一般的な構造物におけるひび割れ発生確率と安全係数 \(\gamma_{cr}\) の対応表」が新たに示されており、より実態に即した安全性の検証が可能になっています。
2023年制定 土木学会 コンクリート標準示方書【設計編】331p
🧪 温度ひび割れ対策の予備検討
重要構造物や大規模なマスコンクリートの施工においては、打設前にコンピュータによる「温度解析(3次元FEM解析など)」を行い、対策の必要性や効果を事前に評価することが一般的です。
たとえば、巨大な橋台の温度解析では、「パイプクーリングを実施した場合」と「しなかった場合」の表面温度やひび割れ指数(\(I_{cr}\))の違いを定量的に比較し、最適な施工計画を立案することが可能です。





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