―「電磁波レーダ法」と「電磁誘導法」は何が違うのか?
コンクリート診断の出発点は、内部(鉄筋・配管など)を正しく把握することです。ただし、内部を直接見ることはできません。そこで活躍するのが「非破壊検査(NDT)」です。
コンクリート診断士試験で頻出なのは次の二つの手法です。
- 📡 電磁波レーダ法(GPR:Ground Penetrating Radar)
- 🧲 電磁誘導法(EMI:Electromagnetic Induction)
両者は原理がまったく異なるため、得意な場面が明確に分かれます。
「コンクリートが湿っている場合は?」「空洞を見つけたい場合は?」といった定番設問に即答できるよう、それぞれの要点と使い分けを整理しましょう。
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この記事で解説する非破壊検査の知識を、実際の試験問題形式でトレーニングできる「実戦ドリル(PDF付き)」を公開しました。 「どの目的に対して、どの検査手法を選ぶべきか」を最短で確度を上げるプロセスとして身につけたい方は、記事と合わせてご活用ください。
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【1】電磁波レーダ法( GPR)
アンテナからコンクリート内部へ電磁波(短パルス)を送信し、内部で反射して戻るまでの時間と反射強度を解析して、埋設物や欠陥の位置・深さを推定する手法です。
⚙️ 原理(比誘電率の違いで反射)
電磁波は、相対誘電率(\(\epsilon_r\))が異なる物質の境界で反射する性質を持っています。します。
コンクリートの \(\epsilon_r\) は乾燥状態で約6ですが、空気(\(\approx 1\))、水(\(\approx 80\))、金属(導体)との境界で強く反射します。
⚠️ 試験のポイント:湿潤状態の影響
コンクリートが湿潤状態にあると、\( \epsilon_r \) だけでなく導電率も上昇します。これにより、電磁波の減衰(吸収)や散乱が増大し、透過性が低下(深部まで届きにくくなる)します。つまり、湿潤環境では精度が落ちやすいのが弱点です。
📉 データの見え方(重要)
アンテナを移動させながら探査するBスキャン画像では、鉄筋などの線状・点状の小反射体が典型的に「双曲線(山形)」の波形として現れます。この双曲線の頂点が、鉄筋の直上(中心)に対応します。
✅ メリット
- 金属以外も検出可能: 鉄筋だけでなく、塩ビ管、空洞・剥離、含水異常なども検知できます。
- 広範囲を高速に探査: アンテナを走らせるだけで、面的かつスピーディな探査が可能です。
- リアルタイム性: 現場の画面でBモード波形や3D画像として、その場で可視化・確認しやすい。
⚠️ デメリット
- 水分・高導電環境に弱い: 湿潤や高塩分、粘土質などの環境では電磁波が減衰し、深達度・分解能が著しく低下します。
- 深さ推定は設定依存: 誘電率(電磁波の伝播速度)の設定に誤差があると、深さの推定値がズレてしまいます。
- 密集配筋での干渉: 鉄筋が密集していると反射波が重なり、個々の識別や奥の探査が難しくなります。
🧲 【2】電磁誘導法(EMI / かぶり測定器)
励磁コイルから交流磁界を発生させ、鉄筋に渦電流を誘起し、その二次磁界の変化を測定することで、鉄筋位置・かぶり・径などを推定する手法です。
⚙️ 原理(渦電流と二次磁界)
探査機のコイルから交流磁界をコンクリート内部へ向けて発生させます。すると、近傍にある導電体(鉄筋)に「渦電流」が流れます。この渦電流が逆向きの「二次磁界」を形成し、その磁界の変化を探査機が検知・解析することで、鉄筋の存在や距離(かぶり)、太さ(径)を割り出します。
✅ メリット
- かぶり推定が高精度: 浅い範囲(例:〜40mm程度)であれば、ミリ単位の高精度な測定が狙えます。
- 鉄筋径の推定が可能: 単独の鉄筋であり、適切な条件が揃えば、鉄筋径(太さ)の推定機能を備える機種があります。
- 湿潤の影響を受けにくい: 金属の磁気的・電気的応答を捉えるため、電磁波レーダ法ほどコンクリートの水分や骨材の影響を受けません。
⚠️ デメリット
- 金属のみが対象: 磁界の変化を利用するため、非金属管(塩ビ管など)や空洞は検出できません。
- 深さに制約がある: かぶりが深くなるにつれて磁界の感度が急激に低下します。深い位置や二重配筋の奥側は測定が困難です。
- 径推定は条件依存: 隣接する鉄筋、重ね継手(ラップ)、他の金属物の干渉があると誤差が大きくなります。最終的な確証には、一部をはつって直接測る(露出計測)のが無難です。
☢️ 【3】X線透過撮影法(Radiography)📝 概要
病院のレントゲン撮影と全く同じ原理です。X線(または\(\gamma\)線)をコンクリートに照射し、物質の密度による透過量の差を利用して内部を画像化します。
⚙️ 原理
線源から照射された放射線は、材料の密度や厚さによって吸収・透過の度合いが異なります(鉄筋はX線をよく吸収し、空洞はよく透過する)。その透過量の差を、反対側に置いた検出器(フィルムやイメージングプレート)で濃淡の画像として記録します。
✅ メリット
- 視覚的に最も確実: 配筋状態や欠陥(空洞・ジャンカ)の形状が、直感的な写真画像として明瞭にわかります。金属・非金属問わず探査可能です。
- 高分解能: 条件が合えば、ミリ単位の細かい識別も可能です。
⚠️ デメリット
- 両面アクセスが必要: コンクリートの片側に線源、もう片側に検出器を配置する必要があります(床板を調べるなら、下階からのアクセスも必須)。
- 放射線管理が必須: 立ち入り禁止区域(安全境界)の設定など、有資格者による厳重な安全管理が不可欠です。
- 厚い部材は困難: 密度が高いコンクリートでは、厚さが約300mmを超えるとX線が透過しにくくなり、撮影が極めて困難になります。
💡 NDTの「数値」を無条件で信じていませんか?
非破壊検査の値は、「湿潤・乾燥」「表面状態」「密配筋」などの条件で大きく変動します。
Note版の「診断士ドリル-11B(読み方編)」では、測定条件によって値がどう動くのか、そして矛盾が出た際の「整合確認」の型を詳しく解説しています。
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📊 【試験対策】三手法の比較表まとめ
試験直前の整理として、3つの手法の特徴を比較表で押さえておきましょう。
| 項目 | 📡 電磁波レーダ法 | 🧲 電磁誘導法 | ☢️ X線透過撮影法 |
| 原理 | 比誘電率差の反射 | 渦電流・二次磁界 | 密度差(透過量) |
| 探知対象 | 金属・非金属・空洞 | 金属のみ | すべて |
| 湿潤の影響 | ❌ 弱い(減衰する) | ◎ 影響が小さい | ⭕ 影響が少ない |
| 径の推定 | △(条件依存・処理要) | ⭕ 単筋で可能 | ◎ 画像で判別容易 |
| かぶり精度 | ⭕(速度設定に依存) | ◎ 浅い範囲で高精度 | ◎ 幾何的に正確 |
| 作業条件 | 片面アクセスで可 | 片面アクセスで可 | 両面アクセスが必要 |
| 表示形式 | 双曲線(山形)・断面 | 数値・指標中心 | 写真(透過画像) |
🧭 【現場で迷わない】【使い分けのフローチャート(簡易)】
現場でどの手法を選ぶべきか迷ったら、以下の質問で絞り込みます。
Q1. 空洞や塩ビ管も見つけたい?
- YES ➡️ 📡 電磁波レーダ法(GPR)または X線
- NO ➡️ Q2へ
Q2. コンクリートは湿っている(含水が多い)?
- YES ➡️ 🧲 電磁誘導法(EMI)(※GPRは電磁波が減衰するため不適)
- NO ➡️ Q3へ
Q3. 鉄筋径(太さ)も知りたい?
- YES ➡️ 🧲 電磁誘導法 または ☢️ X線(条件と安全確保が前提)
- NO ➡️ 📡 電磁波レーダ法(広範囲を速く探査するのに最適)
💡 【確認クイズ(ひっかけ問題)】
Q. 電磁波レーダ法では、水の相対誘電率がコンクリートより非常に高いため、湿潤状態のコンクリート内部にある鉄筋は乾燥時よりも“鮮明”な反射波形として検出されやすい。◯か✕か?
A. ✕(バツ)
解説:
コンクリートが湿潤状態になると、誘電率だけでなく「導電率」も上がります。導電率が上がると電磁波がコンクリートに吸収(減衰)・散乱されやすくなります。
その結果、深部まで電磁波が届かなくなり、S/N比(信号対雑音比)も低下するため、鉄筋の反射波形は一般に“不鮮明”になり探査が困難になります。試験で非常によく出るひっかけです!
📅 次回予告
鉄筋の位置が分かったら、次はコンクリートの「強度」と「腐食状況」を評価します。
次回は「【診断士-08】反発度法(シュミットハンマー)と自然電位法」です。
- 🔨 叩くだけで強度を推定できるのはなぜか?(反発度法の原理と限界)
- ⚡ 電気的な指標で腐食の「確率」をどう読み解くか?(自然電位法)
仕組みを分かりやすく紐解きます。
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