【診断士-08】反発度法と自然電位法

【第Ⅱ部】コンクリート診断士

―強度の「推定」と腐食の「確率」

非破壊検査シリーズの後半戦です。前回(レーダ法・電磁誘導法)で「鉄筋の位置」を把握したあとは、コンクリートの「強度」と鉄筋の「サビ(腐食)」を評価します。

試験において、この分野を攻略する最大のポイントは、「これらはあくまで『推定』や『確率』であり、絶対的な断定ではない」という非破壊検査の限界(誤差要因)を正しく理解しているかどうかです。

この記事では、試験で頻出の「反発度法(シュミットハンマー)」と「自然電位法」の原理、そして絶対に覚えておくべき「値がズレる条件」を分かりやすく解説します。


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非破壊検査の数値は、条件(湿潤・乾燥・表面状態)によって大きく変動します。

この記事で解説する「誤差要因」を踏まえ、実際の記述式試験でどう答案にまとめるか(相対比較と整合確認の型)を学びたい方は、以下の実戦ドリルをご活用ください。

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🔨 1. 反発度法(シュミットハンマー):強度の推定

📝 概要と原理

バネの力でハンマーをコンクリート表面に打撃し、跳ね返りの度合い(反発度)から圧縮強度を推定する試験です。(規格:JIS A 1155

原理は非常にシンプルで、「表面が硬いほど、反発度が大きくなる」という経験的な相関関係を利用しています。直接コンクリートの内部強度を測っているわけではなく、あくまで「表層の硬さ」を指標化している点に注意が必要です。

📏 手順・注意(JISの要点)

試験でよく狙われるJIS規格のルールです。

  • 機種選定:
    • 一般的なコンクリート:N型(衝撃エネルギー 約 \(2.207 N \cdot m\))
    • 薄い部材・軽量コンクリート:L型(衝撃エネルギー 約 \(0.735 N \cdot m\))
  • 校正: テストアンビルを使用して打撃点検し、規定範囲内であることを確認します。
  • 表面処理: 塗装や汚れを除去し、砥石で平滑に研磨します。
  • 測定: JISでは1か所につき、互いに \(25 \sim 50 mm\) 間隔で「9点」を打撃し、平均値を求めます(異常値は除外して平均)。
  • 換算: 打撃角度などの補正を行い、専用の換算式(またはコア強度との相関)を用いて圧縮強度を推定します。

⚠️ 測定値の補正(試験頻出のトラップ!)

反発度は環境条件に大きく左右されます。以下の3パターンは必ず暗記してください。

💧 湿潤状態低く出る過小評価水分が衝撃を吸収してしまうため。原則は乾燥状態で測定し、やむを得ない場合は補正する。
🧱 中性化高く出る過大評価表層が炭酸カルシウム化して硬くなるため。内部強度が低くても高く出がち
📐 打撃角度変化する要補正重力の影響を受けるため、上向き・下向き・水平でそれぞれ補正が必要。

💡 診断上の鉄則(超重要)

中性化が進行した古い構造物では、「実際の内部強度は低いのに、反発度だけが高く出る」という現象が起きます。そのため、反発度単独での判断は極めて危険です。

必ず「コア供試体の圧縮強度試験(微破壊)」と比較し、現場ごとの補正係数を決めてから評価するのがプロの鉄則です。


⚡ 2. 自然電位法:鉄筋腐食の「確率」診断

📝 概要と原理(ハーフセル法)

コンクリートを大きく破壊せずに、内部鉄筋の腐食の有無(可能性)を電気化学的に推定する方法です。(準拠:ASTM C876

鉄筋が腐食すると、電気化学反応によって電位が負側(マイナス方向)へ低下する性質を利用します。

コンクリート表面に照合電極(一般に銅・硫酸銅電極:CSE)を当て、内部鉄筋との間の電位差(自然電位)を電圧計で測定します。

📏 測定のポイント

  • 完全な非破壊ではない: 鉄筋と計測器(電圧計)をケーブルで接続するため、局所的にはつり出して電気的な導通を確保する必要があります。
  • 湿潤が必要: コンクリートが乾燥していると電気が通りにくく、値が不安定になります。測定前には散水等で表面を適度に湿らせます。
  • マッピング: 表面をグリッド状(網目状)に多数測定し、電位分布(等電位線図)を作成して面的に評価します。

🚫 適用限界(試験でよく出るNG条件)

以下の場合は電気的導通が得られない、あるいは正しく計測できないため、適用外となります。

  • エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用している場合(絶縁されているため)。
  • 鉄筋と表面の間に防水膜(絶縁層)がある場合。

📊 判定基準(CSE電極の場合)

電位がマイナスに振れるほど、腐食している確率が高くなります。数値の基準を覚えましょう。

自然電位 (vs CSE)腐食の確率(可能性)判定
0 ~ -200 mV90%以上で非腐食🟢 健全
-200 ~ -350 mV不確定🟡 グレーゾーン
-350 mV より負90%以上で腐食🔴 腐食疑い

⚠️ 注意(限界)

自然電位法でわかるのは、あくまで「今、腐食反応が起きている可能性(確率)」です。「腐食の速度(あと何年持つか)」や「どれくらい断面が減っているか」は分かりません。必ず、塩化物イオン量調査やはつり調査と併用して判断します。


💡 NDTの矛盾をどう解くか?(記述対策)

「自然電位は腐食を示しているが、塩分量は少ない」といったデータの矛盾が出た際、診断士はどう結論づけるべきか?

Note版の「診断士ドリル-12B(調査計画の落とし穴)」では、こうした矛盾を「整合確認」の型で解き明かす記述テクニックを解説しています。

▼ 矛盾を味方につける「整合確認」の技術 ▼

[👉 診断士ドリル-12B 調査計画の落とし穴(Note版)]

🔌 3. その他の電気化学的試験

試験では「試験名称」と「何がわかるか(目的)」のペアを問われます。しっかり区別して暗記しましょう。

① 分極抵抗法 🏎️\(\rightarrow\) 「腐食速度」の推定

  • 何がわかるか:鉄筋が「どれくらいのスピードで錆びているか」を推定します。
  • 特徴:分極抵抗\(R_p\) を測定し、Stern–Geary式を用いて腐食電流密度 \(i_{corr}\) を算出します。「\(R_p\) が小さいほど、腐食速度が速い」と覚えてください。

② 電気抵抗法 🌧️\(\rightarrow\) 「腐食しやすさ(環境)」の推定

  • 何がわかるか:コンクリートの抵抗率を測ることで、その場所が「腐食しやすい環境かどうか」を推定します。
  • 特徴:抵抗率が低い=水分や塩分が多く、電気が通りやすい=腐食しやすい環境です。
  • 目安: \(<5 k\Omega \cdot cm\)(非常に高いリスク)~ \(>20 k\Omega \cdot cm\)(低いリスク)。

✅ 試験対策:使い分けリスト

目的適した手法キーポイント
強度の簡易推定🔨 反発度法中性化で高く、湿潤で低く出る。JISは1か所9点。
腐食有無(確率)⚡ 自然電位法\(-350 mV\) より負は危険。導通必須。被覆鉄筋は不可。
腐食進行速度⏱️ 分極抵抗法分極抵抗 \(R_p\) が小さいほど速度大。高度な解析が必要。
環境の腐食性🛡️ 電気抵抗法抵抗率が低いほど腐食環境が厳しい。


📚 今回の確認クイズ

Q. 古いコンクリート橋脚で反発度法を実施したところ、想定より非常に高い反発度が記録された。「このコンクリートは健全で高強度である」と即断してよいか?

A. よくない(×)。

解説: 中性化が進むと表層が炭酸カルシウム化して緻密・硬化します。そのため、内部強度が低くても反発度が高く出る(過大評価)傾向があります。必ず「コア採取による圧縮強度試験」などを併用して補正・検証する必要があります。

📅 次回予告

ここまで非破壊検査について学んできましたが、表面からの探査や電気的な推定には限界があります。確実な判断を下すには、やはり「実物」を採取する方法が最強です。

次回は【診断士-09】微破壊試験と化学分析|コア採取・中性化深さ・塩化物イオン量測定を解説します。

コアを抜く位置のタブー、フェノールフタレイン溶液が「赤くならない」のはどっち? 試験の定番である化学分析の手順をスッキリ整理します。


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