■導入
「渋滞で遅れています。到着あと10分です」
時計を見ると、出荷からすでに80分経過。打設完了までを含めると、実質的な管理時間はさらに厳しくなります。
現場ではよくある状況ですが、ここで迷うのが――
・90分を超えたら即NG?
・せっかく来たからと受け入れたら、誰の責任になる?
・プラントに持ち帰らせることはできる?
結論から言うと、
“時間だけで機械的にNGとするのは早計”ですが、
同時に“情に流されて受け入れるのは致命的”です。
なぜなら、「一旦受け入れて打設してしまえば、その品質責任はすべて施工者(あなた)が被ることになる」からです。
■到達目標
・「受入責任」の境界線を明確に理解する
・遅延時の現場での判断フローを持てる
・不良な生コンを毅然と「返退」させる基準を持てる
■結論(先に)
✅ 生コンの責任分界点は「荷卸し時」。受け入れたら施工者の責任!
✅ 時間は“品質の目安”。最終判断は「スランプ・温度・空気量・目視」のデータで行う
✅ 基準外なら迷わず「返退(持ち帰らせる)」。それは施工者の権利であり義務。
■最大のポイント:生コンの「責任分界点」とは?
JIS(日本産業規格)において、生コンプラントが品質を保証する責任範囲は「荷卸し地点(現場でミキサー車のシュートから出てきた時点)」までと明確に定められています。
ここが運命の分かれ道です。
👉 プラントの責任:現場に到着し、規定の品質を満たした生コンを排出するまで。
👉 施工者の責任:ポンプ車やバケットに入り、構造物に打ち込んでから先すべて。
もし、「時間が超過して硬くなっている生コン」を、運転手に同情して受け入れたり、シャブコン(加水)にして無理やり打設した場合、後から強度不足やひび割れが発覚しても「不良品を受け入れて施工した現場の責任」となり、最悪の場合は自腹でハツリ直し(解体・再施工)となります。
■なぜ「90分(または120分)」の制限があるのか
👉 コンクリートの性状変化(ワーカビリティ低下)を防ぐためです。
時間が経つと、
・スランプ低下
・凝結進行(硬化の始まり)
・ポンプ圧送性の悪化
が発生します。
つまりルールの本質は「時間を守ること」ではなく「品質劣化を防ぐこと」にあります。
■よくある誤解と現場のリアル
❌ 「90分超えた=絶対に使えないゴミ」
→ これは物理的には不正確。適切に管理され、品質が確認できれば使用可能なケースはある(※特記仕様書で時間が厳格に縛られている場合を除く)。
❌ 「150m³に1回の試験車じゃないから、怪しくても突き返せない」
→ 大間違いです。間の車であっても、目視で「分離している」「明らかに硬い」と異常を感じた場合、施工者は臨時の追加試験を要求でき、結果がアウトなら堂々と持ち帰らせる(返退させる)権利があります。
■30秒判断フロー(現場用)
① 到着時刻・打設完了見込みの確認
→ 規定時間(90分/120分)超過?(YES / NO)
② 目視確認(試験車以外でも必ず見る)
→ 明らかに硬い? 分離している? → 怪しければ即、追加試験!
③ スランプ・温度・空気量の確認
→ 許容基準内か?(YES / NO)
※明らかな分離・初期凝結が見られる場合は試験を待たず即返退判断
④ 協議・受入判断
▶ 全てOK → 発注者・監督員にデータを示して協議 → 承認後に使用
▶ NG項目あり → 受入拒否(プラントへ返退)
■トラブルを防ぐ「返退(持ち帰り)」の作法
① 必ず「数値(または明確な記録)」でNGの証拠を残す
「見た目が硬い」という感覚ではなく、「スランプ試験をした結果、許容差を外れている」という事実を作ります。
(※分離や硬化が激しく試験すらできない場合は、その状態がはっきり分かる動画や写真を証拠とします)
② 写真+伝票への記録
試験結果(メジャーとスランプコーン)を写真に撮り、納品書(伝票)の備考欄に「◯時◯分、スランプ◯◯cmで規格外のため返退」と書き、運転手のサインをもらいます。
③ プラントへ即連絡
現場からプラントの技術・配車担当に直接電話し、「規格外で返した。次の車から配合を再調整しろ」と指示します。
■発注者に詰められたときの切り返し(協議の仕方)
❌ NG例
「90分超えてますが、柔らかいので使いました」
👉 独断での使用は最悪のコンプライアンス違反。全責任を被ります。
⭕ OK例
「運搬時間が◯分超過しましたが、現場で即時試験を行い、スランプ◯cm、温度◯℃で基準内であることを確認しました。品質上問題ないと判断しますが、本車両の打設についてご承認いただけますでしょうか」
👉 論点を「時間」から「実際の品質(数値)」にスライドさせ、承認を得てから打ち込みます。
■まとめ
・受入のサインは「この品質で全責任を負う」というハンコと同じ。
・時間のルールは品質劣化の目安。最終判断は「数値(試験結果)」で行う。
・基準を満たさない生コンを持ち帰らせるのは、施工者の正当な権利であり義務。
※「迷ったら受け入れない」が原則。
一度打ち込んだコンクリートは戻せませんが、
生コン車は返すことができます。
👉 現場管理者の真の価値は、“時計だけを見る人”でも“情に流される人”でもなく、
“事実(データ)をもとに毅然と品質をジャッジし、現場と会社を守れる人”です。


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