こんにちは、koneka(こねか)です。👋
2026年3月23日付で、セメントの品質規格である JIS R 5210(ポルトランドセメント) をはじめ、関連規格が一斉に改正され、官報公示されました。 今回の改正は、セメント=コンクリートの根幹に関わるため、実務者にとってインパクトの大きいニュースです。
本記事では「何が、なぜ変わったのか」「現場・工場にどう影響するのか」「資格試験の受験者はどう捉えるべきか」を、なるべく誤解が出ない形で整理します。
⏱️ 30秒でわかる結論(要点だけ先に)
- 🌱 目的は カーボンニュートラル(CN)対応=クリンカー/セメント比の低減。
- 📈 普通ポルトランドの「少量混合成分」は 上限5%→10%へ(ただし 10%まで増やせるのは“石灰石系”に限定)。
- ❌ 強熱減量(LOI)の規定値は削除(石灰石増量で“風化指標”として使いにくくなるため)。
- 👷 実務的に効くのは 受入基準(密度・LOI) と 試験方法(R5201追補)、さらに建築分野では 大臣認定の基準値“読替え通知”。
- 📝 コンクリート技士/主任技士等(JCI)は「試験日の1年以内の改正は出題対象外」と公式に明記。
1. 🌍 なぜ今、セメントJISが改正されたのか?(最大の狙い)
今回の改正の最大の背景は、CO₂排出量削減=カーボンニュートラル対応です。 セメント製造では、クリンカー焼成の熱エネルギーに加え、石灰石の脱炭酸(プロセス起源)によりCO₂が多く排出されます。 そのため業界としては、クリンカー/セメント比を下げることが現実的な削減策の一つと位置付け、今回のJIS改正が進められました。
2. 🔍 ここが変わった!改正の「2大ポイント」
① ⬆️ 普通ポルトランドの「少量混合成分」上限が 5% → 10%へ
従来、普通ポルトランドセメントは、クリンカー+石膏に加え「少量混合成分」を合計 5%まで混合できました。 今回、これを 10%まで認める方向に見直しが行われました。
⚠️ ただし重要なのは、“何でも10%混ぜてよい”わけではない点です。
10%まで増量できるのは、石灰石(+同等品質のもの)に限定され、高炉スラグ/フライアッシュ/シリカ質混合材は従来どおり5%までという整理になっています。 さらに、石灰石と同等品質のものとして 「人工炭酸カルシウム」 の使用も可能になっています。 (ここはCNの文脈で今後注目されやすいポイントです。)
② ✂️ 「強熱減量(LOI)」の規定値が削除された
従来、セメントの強熱減量(LOI)は、空気中の水分やCO₂を吸って風化していないかを見る “新鮮度の指標” の一つとして扱われてきました。 しかし、①のとおり 石灰石(CaCO₃)が増えると、高温加熱時にCO₂が抜ける分が増え、LOIが増加しやすくなります。 つまり、「LOIが大きい=風化」と短絡できない場面が増えるため、JISの品質規定値としては削除されることになりました。
加えてセメント協会の整理では、出荷段階での風化がほぼ生じていないこと、生コン工場でLOIが受入に活用されている実態が乏しいこと、代替確認手段(目視、凝結、強度など)があることも示されています。
3. 📚 同日に改正された関連規格(体系を整理)
今回の改正は、品質規格だけでなく試験方法も含めて同日に動いています。
🏢 品質規格(4規格)
- JIS R 5210(ポルトランドセメント)
- JIS R 5211(高炉セメント)
- JIS R 5212(シリカセメント)
- JIS R 5213(フライアッシュセメント)
🧪 試験方法規格(2規格)
- JIS R 5201(セメントの物理試験方法)※追補1
- JIS R 5203(セメントの水和熱測定方法-溶解熱法)
4. 🏭 現場・工場(実務)への影響は?(ここが一番大事)
ここからが、実務者が押さえるべきポイントです。 結論として、コンクリートの性能が「明日から別物」になるわけではありませんが、書類・受入・試験・認定で“地味に効く”変更が起こります。
影響①:📋 受入基準・社内規格の見直し(LOIと密度)
LOIの規定値が削除されたことで、これまで「JIS適合の確認項目」としてLOIを見ていた場合、成績表の読み方/社内基準の持ち方が変わり得ます。 さらに重要なのが 密度(比重)の変化です。少量混合成分(石灰石系)増量により、密度が小さくなるケースがあり得る、と整理されています。 実務的には、社内規格で密度レンジを固定していると、新JISセメントで“書類上は基準外”に見える可能性があるため、早めの棚卸しが安全です。
影響②:⚖️ 試験方法(JIS R 5201追補)— ブレーン法などで“密度は実測”へ
試験方法側でも手当が入っています。 ブレーン法(比表面積)などは計算に密度が必要で、密度レンジが広がると結果に影響し得るため、普通ポルトランドの密度を実測値で扱う趣旨の改正(追補)が行われています。 「工場内試験の手順書」や「外注試験の前提条件」を置いている場合は、“密度固定”になっていないかを一度確認しておくと安心です。
影響③:🏢 建築分野(大臣認定コンクリート)— “基準値の読替え”が公式通知
建築(大臣認定コンクリート)に絡む人は、ここが実務インパクトの核心になりやすいです。 国交省から、JIS改正に伴い認定書別添の 「密度」「強熱減量」基準値を読替えて運用して差し支えない旨の通知が出ています。 通知では例えば、普通ポルトランドの密度レンジの読替えや、強熱減量の扱い変更(「—」)などが示されています。
影響④:🛡️ コンクリート性能は“同程度”という根拠(不安の火消しに使える)
「新しいセメントで性状が変わるのでは?」という不安は現場で出やすいですが、セメント協会は、少量混合成分10%の試製セメントで 現行と同水準の品質・性能が得られる旨を示しています。 また建築研究所の報告でも、大臣認定コンクリートについて フレッシュ性状・強度などが同等と評価されています。
5. ✍️ 【重要】資格試験(コンクリート技士等)を受験される方へ
「今年の試験で新規格が出題されるの?」と焦る方もいますが、まず落ち着いてOKです。 JCI(コンクリート技士試験)の受験申込みの手引きには、次のルールが 明記 されています。
試験日からさかのぼって1年以内に制定されたJISおよび改正された基準類(JIS、コンクリート標準示方書、JASS 5等)中の変更事項については、出題の対象としません。
つまり、2026年3月改正の“変更点そのもの”は、2026年度の試験では原則として出題対象外と捉えるのが安全です。 ※なお、他資格(施工管理技士など)は試験団体ごとに扱いが異なる可能性があるため、最終的には各試験の公式案内を確認してください。
💡 今年の受験生がやるべきこと(方針)
最新動向を「実務の知識」として押さえるのは素晴らしい一方、試験対策では 王道の基礎(セメントの種類・成分・性質)を固めるのが最優先です。 試験の得点に直結する“普遍的ポイント”は、noteの『2026年版|コンクリート技士/主任技士ドリル』で無駄なく整理しています。
→【材料編PDF】第1章〜第5章まとめ
6. ⚠️ よくある誤解(ミス防止)
- ❌ 誤解①:「普通ポルトランドは何でも10%混ぜられる」
✅ → 石灰石(+同等品質=人工炭酸カルシウム)だけが10%対象。高炉スラグ等は従来どおり5%です。 - ❌ 誤解②:「LOIの規定が消えた=風化してもOK」
✅ → “規定値が削除”であって、品質確認の考え方が不要になったわけではありません(目視・凝結・強度など代替手段がある、という整理)。 - ❌ 誤解③:「現場のコンクリート性能がすぐ大きく変わる」
✅ → 改正範囲の検証では、現行と同等の性能が示されています(まずは受入・書類・試験運用が主戦場)。
7. ☑️ 実務チェックリスト(社内で共有用)
- ✅ 受入基準に「強熱減量(LOI)」を固定値で入れていないか確認
- ✅ 密度(比重)の社内規格レンジは妥当か(新JISセメントで外れ得る)
- ✅ ブレーン法など、試験計算で密度固定の運用になっていないか(R5201追補の趣旨)
- ✅ 建築(大臣認定)案件は、国交省の“読替え通知”の扱いを整理したか
- ✅ 現場説明用に「性能は同程度(根拠あり)」の資料リンクを持っているか
🔗 参考リンク(一次情報)
- セメント協会:カーボンニュートラル実現に向けたセメントJIS改正(まとめ) https://www.jcassoc.or.jp/jis-revision.html
- セメント協会:改正概要PDF(技術的背景・変更点) https://www.jcassoc.or.jp/cement/4pdf/2026-950-jis-revision-overview.pdf
- 国交省:大臣認定コンクリートの密度・強熱減量「読替え」通知(国住指第473号) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001990192.pdf
- 建築研究所:JIS改正後セメント使用時の性能評価(建築研究報告No.156) https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/report/156/index.html
- JCI:コンクリート技士試験 受験申込みの手引き(1年ルール明記) https://www.jci-net.or.jp/j/exam/gishi/pdf/gis_2025_tbk.pdf


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