【診断士-02】ひび割れ写真で読み解く!劣化原因の特定フローと形状パターン(ASR・塩害・中性化)

【第Ⅱ部】コンクリート診断士

コンクリート診断士試験において、最も配点が高く、かつ実務でも避けて通れないのが**「ひび割れ(クラック)の診断」**です。

試験の写真問題を見て、瞬時に原因を特定できるか? そして、記述式で「なぜその原因だと推定したのか」を論理的に説明できるか? 勝負の分かれ目は、**「観察 → 仮説 → 検証」**という論理的な絞り込みの“型”を身につけているかどうかにあります。

この記事では、ひび割れの形状から原因を特定するための思考プロセスと、試験でそのまま使える記述テンプレートを詳しく解説します。


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🔎 ひび割れ診断の基本フローチャート

目の前にひび割れがあった時、やみくもに原因を推測してはいけません。以下の3ステップで論理的に思考を展開しましょう。

STEP1|観察(Photo / Field)

まずは客観的な事実を集めます。試験では写真から読み取れる情報をすべて挙げます。

  • 🕸️ 形状:網目状(亀甲状)か? 直線状か? 格子状か? スケーリング・ポップアウトはあるか?
  • 🧭 方向:主鉄筋に沿っているか? 拘束方向に対して直角か?
  • 🧴 付着物白色ゲル(ASRのサイン)や錆汁(腐食のサイン)、白色析出(遊離石灰)が出ているか?
  • 🌍 環境:海岸(塩害)、融雪剤(塩害/凍害)、屋内乾燥(乾燥収縮)、築年数(中性化)、雨掛かりの有無。

STEP2|仮説(原因の絞り込み)

観察結果から、可能性の高い原因を推定します。

  • ASR:湿潤環境 + 網目状 + 白色〜半透明ゲル
  • 乾燥収縮:乾燥環境 + 材齢初期〜数年 + ゲルなし
  • 鉄筋腐食(塩害/中性化):鉄筋沿いの直線 + 錆汁
  • 凍害:寒冷地 + ポップアウト + スケーリング
  • 疲労(床版):輪荷重位置を中心とした格子状(グリッド状)

STEP3|検証(確定のための試験・測定)

仮説を裏付けるための具体的な調査を提案します。

  • 🧪 ASR:コア採取による薄片ペトログラフィー観察(偏光顕微鏡)、SEM-EDSによるゲル同定。
  • 🎨 中性化フェノールフタレイン法(噴霧後すみやかに判定)。
  • 🧂 塩害:ドリル削孔粉の深さ方向プロファイル(全塩化物または自由塩化物量)。
  • 🔧 腐食状況:自然電位法(半セル電極)、電気抵抗測定、断面減少量の実測。
  • 🧊 凍害:スケーリング深さ、ポップアウト密度の評価。

🕸️ パターン1:網目状・亀甲状のひび割れ

ひび割れが不規則に、地図のような模様(マップクラック)を描いている場合、疑うべきは**「内部膨張(ASR)」または「収縮」**です。

A) アルカリシリカ反応(ASR)

  • 形状:無拘束部では地図状(マップクラック)になります。
  • 注意点:**強い拘束がある部材(柱・梁)では、膨張が拘束されるため、「主鉄筋方向(軸方向)」**にひび割れが走ることがあります。ここが試験の盲点です。
  • 特徴白色〜半透明のゲルの滲出が外観の決定打となります(最終確定は薄片観察)。

B) 乾燥収縮ひび割れ

  • 形状:微細で不規則な網目状。
  • 環境:屋内や雨掛かりのない屋外など、乾燥環境で発生します。
  • 見分け方:ASRと似ていますが、ゲルは伴いません

出典:コンクリート基本技術調査委員会 | 不具合対処例

📏 パターン2:鉄筋に沿った直線的なひび割れ

C) 塩害(Chloride Induced Corrosion)

  • 形状:鉄筋位置をなぞる直線的なひび割れ。しばしば黒褐色〜赤茶色の錆汁を伴います。
  • 見極め:外観だけでは中性化と区別が困難です。塩分量プロファイルで鉄筋位置の濃度を確認する必要があります。

出典:ConCom | コンテンツ 現場の失敗と対策 | コンクリート工事 | 塩害を受けた海上コンクリート桟橋上部工の部分的な断面修復箇所の再劣化

D) 中性化(Carbonation)

  • 形状:塩害と同じく、鉄筋沿いの直線ひび割れ。
  • 見極めフェノールフタレイン試験を行い、炭酸化域がかぶり厚に達しているか確認します。
  • 環境:湿度50~70%の環境で最も進行が速くなります。

出典;コンクリートの中性化予測における岸谷式の概要 – Genspark


🧊 パターン3:その他の特徴的なひび割れ

E) 凍害(Freeze–Thaw)

  • 形状:微細なひび割れの集合、スケーリング(層状剥離)、ポップアウト(骨材周囲のクレーター状の欠け)。
  • 環境:寒冷地での凍結融解の繰り返し。融雪塩の使用で被害が顕著になります。

出典:凍害 擁壁 【北海道】 | コンクリート劣化写真 | 一般社団法人コンクリートメンテナンス協会

F) 疲労(Fatigue / Bridge Deck)

  • 形状:進行とともに直交するひび割れが増え、**「格子状(グリッド状)」**に進展します。
  • 特徴:輪荷重の軌跡に集中し、ひび割れ面の擦れによる角欠けや**白色析出(遊離石灰)**を伴うことがあります。

出典:首都高速道路構造物の損傷状況|企業情報|首都高速道路株式会社

✍️ “即答”テンプレート(記述式の骨子)

試験で「原因推定・調査」を問われた際にそのまま使える構成案です。

観察:写真より、主鉄筋に沿った直線ひび割れと、赤茶色の錆汁を確認できる。対象は海岸線から○○m(または融雪剤散布地域)に位置する。

仮説:変状の主原因は、鉄筋腐食(塩害または中性化)と推定。

根拠:直線ひび割れ+錆汁は腐食膨張の典型所見である。ただし、外観のみでは両者の最終判別は不可。

検証

  1. 🧪 塩分量測定:ドリル削孔粉の深さプロファイルを作成し、鉄筋位置の濃度を把握。
  2. 🎨 中性化深さ:フェノールフタレインで炭酸化深さを測定し、かぶり厚と比較。
  3. 📏 かぶり厚測定:電磁波レーダ等で実測。

方針例:劣化度に応じて、脱塩、断面修復、電気防食等を選定。


🧠 一覧メモ:形状⇔原因対応メモ(試験直前チェック)

ひび割れパターン推定される原因決定的な検証キーワード
網目状 + 白色ゲルASR薄片観察・SEM・残存膨張試験
微細網目 + 乾燥環境乾燥収縮ゲルなし・目地/養生履歴確認
直線 + 錆汁(塩分環境)塩害塩分プロファイル(鉄筋位置)
直線(古い・乾燥環境)中性化フェノールフタレイン(かぶり到達)
ポップアウト・層状剥離凍害空気量・気泡間隔係数
床版の格子状ひび割れ疲労輪荷重軌跡・白色析出


✅ まとめ:写真を見て「即答」できるレベルへ

  • ASRの確証レベル:外観(網目+ゲル)はあくまで「高い疑い」です。「確証」には薄片観察、「将来リスク」には残存膨張試験、という使い分けを記述できると加点されます。
  • 中性化判定:赤変しない領域の深さが「かぶり厚」を超えている場合、腐食リスクが極めて高いと明言しましょう。
  • 塩害判定:「全塩化物」か「自由塩化物」か、どちらの指標で評価したかを明記すると、知識の深さをアピールできます。

📚 おすすめの学習リソース

記事内でも解説しましたが、診断能力を上げるには「多くの変状写真を見る」ことが一番の近道です。 土木学会東北支部公式HPに公開されている以下の資料は、実務者にとって非常に有益ですので、ぜひ参照してください。

🔗 土木技術者のための画像から推定するコンクリート構造物損傷写真集 (土木学会東北支部 コンクリート構造物損傷写真集編集委員会)

📅 次回予告:

ひび割れから原因の「仮説」を立てたら、次はそれを「証明」するための具体的な数値が必要です。 次回は、「【診断士-03】中性化・塩害のメカニズムと調査手法(フェノールフタレイン・塩分量測定)」について解説します。 試験で必ず出る「フェノールフタレインの運用ルール(噴霧後すぐ!)」や「塩分プロファイルの読み取り方」を深掘りしましょう。


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