【診断士-07】鉄筋探査の非破壊検査

【第Ⅱ部】コンクリート診断士

―「電磁波レーダ法」と「電磁誘導法」は何が違うのか?

コンクリート診断の出発点は、内部(鉄筋・配管など)を正しく把握することです。ただし、内部を直接見ることはできません。そこで用いるのが非破壊検査です。試験で頻出なのは次の二つの手法です。

  • 📡 電磁波レーダ法(GPR:Ground Penetrating Radar)
  • 🧲 電磁誘導法(EMI:Electromagnetic Induction)

両者は原理がまったく異なるため、得意な場面が明確に分かれます。「湿っているコンクリートなら?」「空洞を見つけたいなら?」といった定番設問に即答できるよう、要点を整理します。


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【1】電磁波レーダ法(Pulse Radar Method / GPR)

📝 概要

アンテナから電磁波(短パルス)を構造物へ送信し、内部で反射して戻るまでの時間(TWTT)と反射強度を記録・解析して、埋設物や欠陥の位置・深さを推定します。(ASTM D6432ACI 228.2Rの運用ガイドあり)

「pulse radar method(パルスレーダー法)」はレーダー技術全般における一つの動作原理を指し、「Ground Penetrating Radar (GPR)(地中レーダー)」は、そのパルスレーダー方式を特定の用途(地中探査)に応用したシステムを指します。つまり、GPRはパルスレーダー方式を利用した具体的な装置の一つです。 

⚙️ 原理(比誘電率の違いで反射)

電磁波は、相対誘電率(\(\epsilon_r\))が異なる物質の境界で反射します。

コンクリートの \(\epsilon_r\) は乾燥で約6、飽和で約12程度まで上がることが知られており、空気(\(\approx 1\))、水(\(\approx 80\))、金属(導体)との界面で反射しやすくなります。

  • 注意: 湿潤により \(\epsilon_r\) だけでなく導電率も増すため、電磁波の減衰(吸収)・散乱が増え、透過性は低下します(湿潤状態で精度が下がりやすい)。

📉 データの見え方(重要)

移動走査のBスキャンでは、線状・点状の小反射体(鉄筋など)が典型的に**「双曲線(山形)」**として現れ、双曲線の頂点が鉄筋直上(中心)に対応します。

✅ メリット

  • 金属以外も検出: 塩ビ管、空洞・剥離、含水異常なども検知可能。
  • 広範囲を高速に: 空中結合(車載等)・地面結合を使い分けて面的走査が可能。
  • リアルタイム性: Bモードや3D化など、その場で可視化・確認しやすい。

⚠️ デメリット

  • 水分・高導電環境に弱い: 湿潤や高塩分、粘土質などで減衰が大きく、深達・分解能が低下。
  • 深さ推定はキャリブレーション依存: 電磁波速度(\(\epsilon_r\))設定誤差で深さ推定がずれやすい。
  • 密集配筋で干渉: 反射の重なりで識別が難しくなる。

🧲 【2】電磁誘導法(Electromagnetic Induction / Cover Meter)

📝 概要

励磁コイルの交流磁界で鉄筋に渦電流を誘起し、その二次磁界によるコイルインピーダンス変化を測定して、鉄筋位置・かぶり・径などを推定します。

⚙️ 原理(渦電流と二次磁界)

探査機のコイルから交流磁界を発生させると、近傍の導電体(鉄筋)に渦電流が流れ、逆向きの二次磁界を形成します。この磁界変化を検知・解析することで、金属ターゲット(鉄筋)の存在・距離(かぶり)・大きさ(径)に関する情報を得ます。

✅ メリット

  • かぶり推定が得意: 浅い範囲では \(\pm 1 mm\) 級の高精度が狙える機種もある(例:~40 mmで高精度)。
  • 径推定に対応: 単筋・適切条件なら径推定機能を備える機種がある。
  • 湿潤の影響を受けにくい: 金属応答中心のため、GPRほど水分・骨材の影響を受けない。

⚠️ デメリット

  • 金属のみ対象: 非金属管や空洞は検出不可。
  • 深さに制約: かぶりが深くなるほど感度が急低下し、機種によっては最大検出深さが 150~180 mm 程度でも精度は低下(密集配筋・二重配筋で誤読しやすい)。
  • 径推定は条件依存: 隣接筋、ラップ、他金属の干渉で誤差が増すため、最終確認は露出計測が無難。

☢️ 【3】X線透過撮影法(Radiography)

📝 概要

病院のレントゲンと同じ原理で、X線(または\(\gamma\)線)の透過量差(密度差)を利用して内部を画像化します。フィルム、イメージングプレート、DR(デジタルラジオグラフィ)により、配筋や欠陥を“写真”として記録します。

⚙️ 原理

線源から照射した放射線は、材料の密度・厚さによって吸収・透過が異なり、その差が検出器(フィルム/DR)に濃淡として写し出されます。

✅ メリット

  • 視覚的に確実: 配筋状態・欠陥の形状が画像で明瞭。金属・非金属・空洞まで広く対象。
  • 高分解能: 条件が合えばミリ単位の識別も可能。
  • DRの利点: 広いダイナミックレンジ、即時表示、現場で画像強調・保存が容易。

⚠️ デメリット

  • 両面アクセスが必要: 線源と検出器をコンクリートの両側に配置する必要がある(床なら下階のアクセスも必要)。
  • 放射線管理が必須: 安全境界の設定、有資格者による管理が不可欠。
  • 厚部材は条件次第で困難: 線源出力・露光時間・検出器性能・安全条件によっては厚さ約 300 mm 超で撮影が難しくなりやすい。

📊 【試験対策】三手法の比較表

項目📡 電磁波レーダ法 (GPR)🧲 電磁誘導法 (EMI)☢️ X線透過撮影法
原理比誘電率差の反射渦電流・二次磁界密度差(透過量)
探知対象金属・非金属・空洞金属のみすべて
湿潤耐性❌(減衰で弱い)◎(影響小)⭕(影響少)
径の推定△(条件依存・処理要)⭕(単筋で可能)◎(画像で判別容易)
かぶり精度⭕(速度設定に依存)◎(浅い範囲で高精度)◎(幾何的に正確)
作業条件片面で可片面で可両面が必要
表示形式双曲線(山形)・断面数値・指標中心写真(フィルム・DR)

🧭 【使い分けのフローチャート(簡易)】

Q1. 空洞や塩ビ管も見つけたい?

  • YES ➡️ 📡 電磁波レーダ法(GPR)
  • NO ➡️ Q2へ

Q2. コンクリートは湿っている(含水が多い)?

  • YES ➡️ 🧲 電磁誘導法(EMI)(GPRは不適になりがち)
  • NO ➡️ Q3へ

Q3. 鉄筋径(太さ)も知りたい?

  • YES ➡️ 🧲 電磁誘導法 または ☢️ X線(条件と安全確保が前提)
  • NO ➡️ 📡 電磁波レーダ法(広範囲を速く探査)

🔜 【次回予告】

鉄筋の位置が分かったら、次は「強度」と「腐食状況」を評価します。

次回は**「【診断士-08】反発度法(シュミットハンマー)と自然電位法」**。

  • 🔨 叩くだけで強度を推定できるのはなぜか?
  • ⚡ 電気的な指標で腐食の進行をどう読み解くか?

仕組みを分かりやすく紐解きます。


💡 【確認クイズ(ひっかけ問題)】

Q. 電磁波レーダ法では、水の相対誘電率がコンクリートより非常に高いため、湿潤状態のコンクリート内部にある鉄筋は乾燥時よりも“鮮明”な反射波形として検出されやすい。◯か✕か?

A. ✕(バツ)

解説:

湿潤によりコンクリートの誘電率だけでなく導電率も上がり、電磁波が強く減衰・散乱します。その結果、透過深さとS/N比(信号対雑音比)が低下するため、一般に“鮮明”にはなりにくく、探査が困難になります。