テンプレートは覚えたけど、実際に書こうとすると手が止まる…」 そんな悩みを持つ方のために、今回は完全実践形式で解説します。
記述式問題Aは、写真と短い説明文を見て、以下の3つを答える形式が定番です。
- 変状の原因
- 調査・試験方法
- 補修・補強方針
今回は、試験で最も狙われやすい**「塩害と中性化の複合劣化」**をテーマに、模範解答を作成します。
【実務者・受験生の方へ:解答例をただ暗記していませんか?】
模範解答を丸暗記しても、本番で少し条件が変わると書けなくなります。
大事なのは**「なぜその工法を選んだのか」という理由付けの引き出し**を持つことです。
この記事で解説する思考プロセスを、5つの頻出パターン(塩害・中性化・ASR・凍害・疲労)で徹底的にトレーニングできる実戦ドリルを公開しました。
▼ 100文字で完答する「最強の記述フレームワーク」 ▼
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1. 【例題】海岸近くの道路橋
まずは、以下の仮想問題を読んでみてください。
【問題】 海岸線から200mに位置する、供用後35年が経過した鉄筋コンクリート造の道路橋(T桁橋)である。 定期点検において、主桁の下面に主鉄筋に沿ったひび割れと、錆汁の流出が確認された。また、一部ではコンクリートの剥落が生じ、腐食した鉄筋が露出している。
- この変状の主な原因とその根拠を述べよ。
- 詳細調査のために行うべき調査・試験項目を述べよ。
- 適切な補修方針を提案せよ。
2. 解答を作る前の「脳内整理(下書き)」
いきなり書き出してはいけません。まずはキーワードを拾って、パズルを組み立てます。
① ヒントを探す
- 「海岸から200m」 → 塩害(飛来塩分)確定。
- 「35年経過」 → 中性化も進んでいる可能性が高い(複合劣化)。
- 「鉄筋沿いのひび割れ」「錆汁」 → 鉄筋腐食が原因。
② ストーリーを作る
- 原因: 塩害(メイン) + 中性化(サブ)。
- 調査: 塩分量と中性化深さの両方を測る必要がある。あと腐食具合も。
- 対策: 鉄筋が露出するほど重傷だから、「表面被覆」だけでは弱い。「断面修復」が必須。再劣化を防ぐために「遮断」も必要。
よし、これで書けます。前回のテンプレートに当てはめていきましょう。
3. 【模範解答】合格レベルの答案例
以下が、そのまま提出できるレベルの解答例です。(約800~1000文字を想定)
1.変状の原因推定とその根拠
本構造物に発生している変状の主な原因は、塩害であると推定される。また、供用期間が長いことから、中性化の影響も複合している可能性がある。 その理由は以下の通りである。
① 変状の特徴:写真において、主鉄筋に沿った直線的なひび割れと、著しい錆汁の流出、およびコンクリートの剥落が見られる。これらは鉄筋腐食による体積膨張が原因であることを示している。
② 環境条件:海岸線から200mという位置関係から、供用期間中に多量の飛来塩分がコンクリート表面から浸透・蓄積したと考えられる。
③ 経年劣化:供用後35年が経過しており、中性化残りかぶりが減少していることで、鉄筋腐食が加速された可能性がある。
2.必要な調査・試験項目
推定原因を特定し、劣化度を判定するために以下の調査を行う。
① 外観調査および非破壊検査
目視によりひび割れ幅、長さ、剥落範囲を記録する。また、電磁波レーダ法を用いてかぶり厚さを測定し、設計値との整合性を確認する。さらに、自然電位法を用いて、鉄筋腐食の進行範囲(確率)を面的に把握する。
② 微破壊検査および化学分析
コアを採取し、以下の試験を行う。
- 塩化物イオン量測定:コアを深さ方向に切断し、各深さにおける塩化物イオン濃度分布を測定する。鉄筋位置での濃度が、発錆の危険性が高まる一般的指標(1.2~2.0kg/m³)を超えているか確認する。
- 中性化深さ測定:フェノールフタレイン法により中性化深さを測定し、鉄筋位置まで達しているか確認する。
- 圧縮強度試験:コンクリート自体の健全性を確認する。
3.補修・補強の方針 調査の結果、塩分量が発錆限界値を超過し、鉄筋腐食が進行している(劣化期~加速期)と仮定し、以下の補修方針を提案する。
① 劣化因子の除去(断面修復工法) 浮きや剥落が見られる箇所、および塩分濃度が著しく高い箇所は、鉄筋裏側までコンクリートをはつり取る。露出した鉄筋は、サンドブラスト等で除錆・防錆処理を行い、ポリマーセメントモルタル等で断面修復
4. この解答の「加点ポイント」解説
採点官はここを見て「合格」を出します。
- 「複合劣化」に触れている 「海岸=塩害」だけで終わらせず、「35年=中性化」にも触れることで、診断能力の高さ(多角的な視点)をアピールできています。
- 調査の「目的」が明確 単に「自然電位法をやる」だけでなく、「腐食範囲を面的に把握するため」と理由が添えられています。
- 対策に「段階」がある 「悪いところを取る(断面修復)」+「蓋をする(表面被覆)」という、治療の基本セットが提案できています。
💡【ここが差つく!】発錆限界値は「1.2」だけじゃない?
模範解答では「1.2~2.0kg/m³」と幅を持たせて記述しました。ここにはプロの意図があります。 実務において、発錆限界値は構造物の種類やコンクリートの品質によって基準が異なるからです。
- 土木学会基準(一般の道路橋など):安全側を見て1.2kg/m³を目安とすることが多い。
- 港湾基準(桟橋などの海洋構造物):環境特性や実績から2.0kg/m³程度まで許容することがある。
- W/C(水セメント比)の影響:近年の知見では、W/Cが小さく密実なコンクリートほど、酸素供給が抑制されるため限界値は高くなる傾向がある。
試験問題文に「W/C」等の詳細がない場合は、単に「1.2」と決め打ちするよりも、**「一般的な範囲(1.2~2.0kg/m³)や構造特性を考慮して判断する」**という姿勢を見せることで、採点官に「この受験生は背景まで理解しているな」と思わせることができます。
まとめ:本番で焦らないために
今回の例題は、診断士試験の「王道中の王道」です。 このパターンを一つ完璧にしておけば、例えば原因が「中性化」単独になっても、「ASR」になっても、中身の単語を入れ替えるだけで対応できます。
練習課題: この記事を読んだ後、ご自身で**「原因をASRに変えたバージョン」**を頭の中でシミュレーションしてみてください。
- 調査は? → 残存膨張試験、偏光顕微鏡観察…
- 対策は? → 水の遮断、ひび割れ注入…
これがスラスラ出てくれば、合格は近いです。
📅 次回予告
技術的な見解を問われる「記述式問題A」の対策ができたら、次は**「管理技術力や倫理観」が問われる「記述式問題B」**です。
次回は、**「【診断士-14】記述式試験の攻略法③|『記述式問題B』はトレードオフと倫理観で解く」**について解説します。
「環境配慮」「第三者被害防止」「ライフサイクルコスト(LCC)」など、正解が一つではない問題に対して、どう説得力のある論を展開すべきか、その切り口を整理します。
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