―強度の「推定」と腐食の「確率」
非破壊検査の後半戦です。今回は「強度」と「サビ(腐食)」を評価します。
試験での最大のポイントは、**「これらはあくまで『推定』や『確率』であり、断定ではない」**という限界を理解しているかどうかです。
🔨 1. 反発度法(シュミットハンマー):強度の推定
📝 概要
バネの力でハンマーをコンクリート表面に打撃し、跳ね返りの度合い(反発度)から圧縮強度を推定する試験です。(規格:JIS A 1155)
⚙️ 原理
表面が硬いほど反発度が大きくなる。
- **「反発度が大きいほど圧縮強度が高い」**という経験的相関を用います。直接強度を測るのではなく、表層性状を指標化します。
📏 手順・注意(JISの要点)
機種選定:
- 一般的なコンクリート:N型(衝撃エネルギー 約 \(2.207 N \cdot m\))
- 薄い部材・軽量コンクリート:L型(衝撃エネルギー 約 \(0.735 N \cdot m\))
- 校正: テストアンビルで点検し、規定範囲内であることを確認します。
- 表面処理: 塗装や汚れを除去し、砥石で平滑に研磨します。
- 測定: JISでは1か所につき互いに\(25 \sim 50 mm\) 間隔の**「9点」**を打撃し、平均値を求めます。(異常値を除外・補完して平均)。
- 換算: 打撃角度などの補正を行い、換算式(またはコア強度との相関)で強度を推定します。
⚠️ 測定値の補正(試験頻出)
| 条件 | 反発度の傾向 | 強度推定への影響 | 理由・対策 |
| 💧 湿潤状態 | 低く出る | 過小評価 | 水分が衝撃を吸収するため。原則乾燥状態で測定、やむを得ない場合は補正する。 |
| 🧱 中性化 | 高く出る | 過大評価 | 表層が炭酸カルシウム化して硬くなるため。内部強度が低くても高く出がち。 |
| 📐 打撃角度 | 変化する | 要補正 | 重力の影響を受けるため、上向き・下向き等で補正が必要。 |
⚡ 2. 自然電位法:鉄筋腐食の確率診断
📝 概要
コンクリートを大きく破壊せずに、内部鉄筋の腐食の有無(可能性)を電気化学的に推定する方法です。(準拠:ASTM C876)
⚙️ 原理(ハーフセル法)
- 鉄筋が腐食すると、電気化学反応により電位が**負側(マイナス方向)**へ低下します。
- 照合電極(一般に銅・硫酸銅電極:CSE)を表面に当て、内部鉄筋との電位差(自然電位)を測定します。
📏 測定のポイント
完全な非破壊ではない: 鉄筋と計測器を接続するため、一部はつり出して導通を確保する必要があります。
- 湿潤が必要: 乾燥していると電気が通りにくく不安定になるため、測定前に散水等で表面を湿らせます。
- 計器: 高インピーダンス(概ね \(10^6 \sim 10^9 \Omega\))の電圧計を推奨。
- マッピング: グリッド状に多数点を測り、電位分布(等電位線図)を作成します。
🚫 HCPの適用限界(重要)
以下の場合は電気的導通が得られず、ASTM C876は適用外となります。
- エポキシ樹脂被覆鉄筋を使用している場合
- 鉄筋かごと表面の間に**防水膜(絶縁層)**がある場合
📊 判定基準(CSE電極の場合)
| 自然電位 (vs CSE) | 腐食の確率(可能性) | 判定 |
| 0 ~ -200 mV | 90%以上で非腐食 | 🟢 健全 |
| -200 ~ -350 mV | 不確定 | 🟡 グレーゾーン |
| -350 mV より負 | 90%以上で腐食 | 🔴 腐食疑い |
🔌 3. その他の電気化学的試験
試験では「名称」と「何がわかるか」のセットで暗記しましょう。
① 分極抵抗法 \(\rightarrow\) 「腐食速度」の推定 🏎️
- 分極抵抗 \(R_p\) を測定し、Stern–Geary 式で腐食電流密度\(i_{corr}\) を算出します。
- \(R_p\) が小さいほど腐食速度が速いです。
② 電気抵抗法 \(\rightarrow\) 「腐食しやすさ(環境)」の推定 🌧️
- コンクリートの抵抗率を測ります。抵抗率が低い=水分・塩分が多く、腐食しやすい環境です。
- 目安: \(<5 k\Omega \cdot cm\)(非常に高いリスク)~ \(>20 k\Omega \cdot cm\)(低いリスク)。
✅ 試験対策:使い分けリスト
| 目的 | 適した手法 | キーポイント |
| 強度の簡易推定 | 🔨 反発度法 | 中性化で高く、湿潤で低く出る。JISは1か所9点。 |
| 腐食有無(確率) | ⚡ 自然電位法 | \(-350 mV\) より負は危険。導通必須。被覆鉄筋は不可。 |
| 腐食進行速度 | ⏱️ 分極抵抗法 | \(R_p \rightarrow\) 速度。自然電位より高度な解析が必要。 |
| 環境の腐食性 | 🛡️ 電気抵抗法 | 抵抗率が低いほど腐食環境が厳しい。 |
🔜 次回予告
非破壊検査には限界があります。確実な判断には、やはり「実物」を採取する方法が最強です。
次回は**「【診断士-09】微破壊試験と化学分析|コア採取・中性化深さ・塩化物イオン量測定」**を解説。
コアを抜く位置のタブー、フェノールフタレイン溶液が「赤くならない」のはどっち?試験の定番、化学分析の手順を整理します。
📚 今回の確認クイズ
Q. 古いコンクリート橋脚で反発度法を実施したところ、想定より非常に高い反発度が記録された。「このコンクリートは健全で高強度である」と即断してよいか?
A. よくない(×)。
解説: 中性化が進むと表層が炭酸カルシウム化して緻密・硬化するため、内部強度が低くても反発度が高く出る(過大評価)傾向があります。必ず「コア採取による圧縮強度試験」などを併用して補正・検証する必要があります。

