【診断士-11.5】記述式ミニ演習|その知識、現場の試験で使えますか?(実戦シミュレーション)

【第Ⅱ部】コンクリート診断士

これまでの章で、コンクリートの劣化メカニズム(補修)や、構造的な対策(補強)について学んできました。知識のインプットはこれで十分です。

しかし、診断士試験の記述式問題では、知識があるだけでは合格できません。

**「与えられた条件に合わせてベストな工法を選び、それを『技術者として信頼できる言葉』で説明する力」**が求められます。

今回は、次回の「論文の書き方(第12章)」に進む前の**ミニ演習(シミュレーション)**です。

これまで学んだ知識を総動員して、「自分ならどう書くか?」をシミュレーションしてみてください。

この「脳に汗をかくプロセス」を一度挟むだけで、次回の内容の理解度が格段に変わります。


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📝 記述式ミニ演習:補強工法の選定

問題文

あなたはコンクリート診断士として、以下の橋梁の調査・対策を任されました。

【対象構造物】

海岸から200mに位置する鉄筋コンクリート造(RC)の橋梁

【調査結果】

  • 変状: 主桁の下面に幅0.3mm~0.5mmのひび割れが多数発生。一部で鉄筋腐食によるコンクリートの剥落あり。
  • 塩化物イオン濃度: 鉄筋位置で発錆限界値を超えている。

【要求事項(クライアントの要望)】

  1. 劣化の進行を抑制すること。
  2. 大型車両の通行増に伴い、主桁の**「曲げ耐力」を向上**させること。
  3. 桁下の空間制限があるため、「桁高(けたたか)」を変えないこと。
  4. 施工時の交通規制を最小限にするため、**「短工期・軽量な工法」**とすること。

【設問】

この条件における、最も適切と考えられる「補強工法」を1つ選定し、その「選定理由」と「施工上の留意点」を記述せよ。


⏳ シンキングタイム(思考の整理)

すぐに下にスクロールせず、まずは頭の中でロジックを組み立ててみましょう。

今回は**「満点回答」**を目指して、細かい施工管理のポイントまで想像してみてください。

  • 環境は?
    • \(\rightarrow\) 海岸200m(塩害)。鋼材は錆びる。「劣化抑制」も必要。
  • 目的は?
    • \(\rightarrow\) 曲げ耐力アップ。
  • 制約は?
    • \(\rightarrow\) 桁高不変(巻立てNG)、短工期・軽量(重機NG)。
  • 施工のツボは?
    • \(\rightarrow\) シートを貼るだけ? 端っこはどうする? 品質はどう証明する?

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(現場の光景をイメージしてください……答えは決まりましたか?)

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✅ 解答例(模範解答)

これくらい書ければ、文句なしの合格圏内です。

1. 選定工法

炭素繊維シート接着工法(曲げ補強) + 表面保護工(シラン系含浸または保護塗装)

2. 選定理由

本橋は塩害環境下にあり、鋼板接着は補強材自体の腐食リスクが高く不利である。桁下空間制限により断面増加を伴う巻立ては困難であり、短工期・軽量の要求から人力施工が可能な炭素繊維シートが最適である。

また、要求事項である「劣化進行の抑制」に応えるため、ひび割れ注入・断面修復後に表面保護(含浸材または保護塗装)を併用することで、塩化物の再侵入および接着樹脂の紫外線劣化を防止する。

3. 施工上の留意点

  • 下地処理: 既設コンクリートの脆弱部を除去し、健全部を露出させる。ディスクサンダー等で汚れや油分を完全に除去する。
  • 不陸修正: 表面の凹凸や段差をエポキシ樹脂パテ等で平滑にし、シートの浮きや空洞を防ぐ。
  • 隅角部処理: シートの折れ曲がりによる応力集中や切断を防ぐため、桁の角部を半径10mm〜20mm程度のR面取りとする。
  • 繊維方向: 曲げ耐力向上のため、主桁の**軸方向(長手方向)**に合わせて貼り付ける。
  • 定着・端部処理: シート端部からの剥離を防ぐため、必要に応じてUラップ、端部増し貼り、または機械的アンカーによる定着を行う。
  • 品質管理: プライマー・樹脂の塗布量、含水率、温湿度を厳格に管理し、所定の養生時間を確保する。施工後に引張付着試験を行い、所定の強度を確認する。
  • 維持管理: 定期点検計画を策定し、シートの浮き・剥離の有無や、トップコートの劣化状況を確認する。

👨‍🏫 解説:ここが「合否を分ける」ポイント

ただ「炭素繊維を貼る」と答えるだけでは、合格はギリギリかもしれません。

上記の解答例には、採点官が高得点をつける**「加点キーワード」**が散りばめられています。

① 要求事項を「無視」していないか?

問題文に**「劣化の進行を抑制すること」とあります。

炭素繊維シートは「補強(力アップ)」には効きますが、コンクリート内部の塩分吸着までは止められません。

そのため、「+表面保護(含浸材など)」**を付け加えることで、「お、この受験者は設問を隅々まで読んでいるな」と評価されます。

② 「剥がれるリスク」を知っているか?

シート接着工法の最大のリスクは「剥離(はがれ)」です。

  • R面取り(角を丸める)
  • 不陸修正(平らにする)
  • 端部処理(端っこをU字に巻いたりアンカーで止めたりする)これらは全て「剥がさないための工夫」です。この記述があるだけで、現場実務能力の証明になります。

③ 品質・維持管理への視点

「貼って終わり」ではありません。

  • 「引張付着試験で確認する」
  • 「定期点検でトップコートを見る」こういった「施工後の責任」まで言及できると、論文の締まりが圧倒的に良くなります。

次回予告:合格する論文の「型」

「要素はわかったけど、これを実際の試験時間内に、ゼロから文章にするのは大変そう……」

そう思った方も安心してください。

実は、合格する論文には決まった「型(テンプレート)」があります。

今回の模範解答も、以下の5つのブロックにキーワードを当てはめただけで作られています。

  1. 前提・環境認識(塩害・劣化状況)
  2. 目標・制約(耐力アップ・桁高制限・短工期)
  3. 劣化抑制策(表面保護・封止)
  4. 補強工法の選定(CFRP・理由)
  5. 施工・品質・維持管理(R面取り・付着試験・点検)

次回、この**「魔法の5ブロック・テンプレート」**を完全公開します。

これさえ持っておけば、どんな問題が来ても、パズルのように言葉を埋めるだけで合格答案が完成します。

【診断士-12】記述式試験の攻略法①|合格する論文の『型』と『構成テンプレート』

いよいよ本丸への突入です。お楽しみに!

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