コンクリート構造物の耐久性とは、気象、化学的浸食、物理的摩耗などの劣化要因に対して、構造物が長期間にわたり性能や機能を維持する能力を指します。
本記事では、試験でも頻出となる代表的な劣化現象とその対策について解説します。
1. 塩害
■ 概要とメカニズム
塩害とは、コンクリート中の塩化物イオン(Cl⁻)が鉄筋などの鋼材を腐食させ、構造物の性能を低下させる現象です。
通常、コンクリートは高アルカリ性(pH12~13)であり、鋼材表面に「不働態被膜」が形成されて腐食を防いでいます。しかし、塩化物イオンが一定量を超えるとこの被膜が破壊され、腐食が始まります。錆の体積は元の鋼材の2~3倍に膨張するため、ひび割れや「かぶりコンクリートの剥落」を引き起こします。
→「塩害事例の画像を見る。」
■ 塩化物イオンの侵入経路
- 内在塩化物: 海砂、混和剤、セメント、練混ぜ水に最初から含まれるもの
- 外来塩化物: 海水飛沫、凍結防止剤、飛来塩分など外部から侵入するもの
■ 対策と基準値
- かぶり厚の確保と、水セメント比を小さくした密実なコンクリートの施工
- エポキシ樹脂塗装鉄筋(防食鋼材)や防錆剤の使用
- 高炉スラグ微粉末などの混和材の活用(塩化物イオンの浸透抑制)
- 【重要基準】 練混ぜ時の塩化物イオン総量は 0.30 kg/m³以下 と規定(土木学会標準示方書、JASS5、JIS A 5308共通)
- コンクリート用化学混和剤(JIS A 6204)は、塩化物イオン量によりⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種に区分される
出典:JIS A 6204
2. 中性化
■ 概要とメカニズム
中性化とは、空気中の二酸化炭素(CO₂)がコンクリート中の水酸化カルシウムと反応し、炭酸カルシウムに変化することで、本来の高アルカリ性が失われていく(pHが低下する)現象です。
$$\text{Ca(OH)}_2+\text{CO}_2\rightarrow\text{CaCO}_3+\text{H}_2\text{O}$$
アルカリ性が失われると不働態被膜が破壊され、鉄筋が腐食しやすくなります。
→「中性化事例の画像を見る。」
■ 進行速度と条件
- 進行速度の式: 中性化深さ $y$ は、時間 $t$ の平方根に比例して進行します。$y = \alpha \sqrt{t}$ ($\alpha$ は中性化速度係数)
- 進行しやすい環境: 相対湿度が 40~60% の環境下で最も進行が早くなります。
- 判定方法: フェノールフタレイン溶液を塗布し、赤紫色に呈色しない部分が「中性化部」と判定されます。
■ 対策
- かぶり厚の増加と密実なコンクリートの打設
- 表面保護工法(仕上げ材の施工)や再アルカリ化工法の導入
3. アルカリ骨材反応 (ASR)
■ 概要と発生条件
コンクリート中のアルカリ分と、骨材中の反応性鉱物が化学反応を起こして「アルカリシリカゲル(膨張性ゲル)」を生成し、吸水・膨張することでひび割れを生じさせる現象です。
→「ASR事例の画像を見る。」
【ASR発生の3要素】(これらがすべて揃うと発生します)
- 反応性骨材がある量以上存在すること
- 細孔溶液中に十分な水酸化アルカリが存在すること
- コンクリートが多湿または湿潤状態にあること
■ アルカリシリカ反応の詳しい特徴
- 反応性鉱物の例: 火山ガラス、クリストバライト、トリディマイト、オパール、カルセドニー、隠微晶質石英など。
- ペシマム量: 反応性骨材の量が多ければ多いほど膨張が大きくなるわけではありません。膨張が最大となる特定の骨材量の割合を「ペシマム量」と呼びます。
- アルカリの供給源: セメントのほか、海砂に付着した塩化物、外部から侵入した凍結防止剤や海水などが挙げられます。
- 被害を受けやすい環境: 水分が必要不可欠なため、雨水の影響を受けやすい打ち放し構造物や、内部が乾燥しにくいマッシブな構造物で損傷が顕著になります。
■ 骨材の反応性試験方法(JIS)
レディーミクストコンクリート(JIS A 5308)では、以下のいずれかの試験で「区分A(無害)」を確認する必要があります。「区分B(無害でない)」の場合は対策が必要です。
| 試験方法 | 概要と判定基準 |
| JIS A 1145(化学法) | 粉砕した骨材を80℃のアルカリ溶液で24時間反応させ、「アルカリ減少量(Rc)」と「溶解シリカ量(Sc)」から判定する。 |
| JIS A 1146(モルタルバー法) | 特定条件で作成したモルタルバーを40℃・相対湿度95%以上で6ヶ月保存し、膨張量が「0.1%以上」の場合は無害でないと判定する。 |
※2種類以上の骨材を混合して用いる場合、化学法で一つでも「無害でない」と判定されれば、混合骨材全体を「無害でない」として扱います。
■ ASRの対策
- コンクリートの総アルカリ量を規制する(3.0 kg/m³以下)
- アルカリシリカ反応抑制効果のある混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント)を使用する
- 「無害」と確認された安全な骨材を使用する
- 表面保護により外部からの水分浸透を遮断する
4. 化学的浸食
■ 概要
外部から侵入した化学物質(酸、硫酸塩、海水など)がコンクリートと反応し、組織を劣化させる現象です。
■ 化学的浸食の3つの分類と劣化因子
| 劣化形態 | メカニズムの特徴 | 主な劣化因子 |
| ① セメント成分の溶解 | 水に溶けにくい水和物が可溶性に変化し、多孔質化・分解する。 | 酸(酸性雨pH5.6以下含む)、無機塩類、腐食性ガス |
| ② 膨張性化合物の生成 | 水和物と反応し、エトリンガイトなどの膨張性化合物を生成して破壊する。 | 硫酸塩(下水施設など)、海水、動植物油 |
| ③ 長期的な溶脱 | 長期間水に接することで、セメント成分が徐々に水へ溶け出す。 | 純水、軟水など |
※エフロレッセンス(白華): セメント硬化体中の可溶成分が水に溶け出し、表面で蒸発・析出したもの。硬化不良や水セメント比が大きい場合に生じやすい。
→化学的浸食事例の画像を見る。
■ 化学的浸食への対策
- 耐薬品性の高い材料の使用: 耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどを選定する。
- 水密性の向上: 水セメント比を小さくし、密実で水密性の高いコンクリートを打設する。
- 物理的な保護: 十分なかぶり厚を確保し、必要に応じて表面コーティング(被覆)を施して化学物質の侵入を防止する。
- 定期的な点検: 劣化の早期発見と補修計画を実施し、長寿命化を図る。
5. 凍害
■ 概要とメカニズム
コンクリート中の水分が凍結して体積膨張(約9%)し、その内部圧力によって組織が破壊される現象です。
日向の方が「融解→再凍結」のサイクルが繰り返されるため、日陰よりも劣化が早く進行しやすい特徴があります。
吸水性の高い骨材を使用すると、表面が皿状に剥離する「ポップアウト」が発生することがあります。
→凍害事例の画像を見る。
■ 対策
- 耐凍害性の高い骨材の使用(JIS A 1122)
- AE剤を使用し、適切な空気量(3~6%の連行空気)を確保して膨張圧を吸収させる
- 水セメント比を低減し、内部の自由水を減らす
6. すり減り・キャビテーション
■ 概要
- すり減り(摩耗): 車両の通行や、流水中の土砂の摩擦によってコンクリート表面が削られる現象。
- キャビテーション: ダムの余水吐きなどで、高速水流によって生じた気泡(空洞)が崩壊する際の衝撃圧でコンクリートがえぐられる現象。→すりへり事例画像を見る
■ 対策
- 水セメント比を小さくし、圧縮強度の高い密実なコンクリートにする
- すり減り抵抗性の高い硬質な粗骨材を使用する
- 表面を平滑に仕上げ、水流の乱れを防ぐ
✅ 試験対策のポイント
- 各劣化現象のメカニズムと対策を整理する(塩害はCl⁻、中性化はCO₂、など)
- 中性化の進行式($y = \alpha \sqrt{t}$)やASRの発生3条件を理解する
- 塩化物イオンの規制値(0.30 kg/m³)や空気量などの数値を暗記する
✍️ 解いてみよう
理解度を確認するために、以下の過去問題に挑戦してみましょう。

四肢択一の過去問題です。正解と思う設問の○をクリックまたはタップしてください。解き終わったら「回答」をクリックまたはタップすると解答が表示されます。



