🌊 海洋コンクリートとは
海洋コンクリートとは、海水に直接接するコンクリートや、波浪・海水飛沫・潮風の影響を受けるコンクリートを指します。
※土木学会コンクリート標準示方書では「海洋コンクリート」、日本建築学会のJASS 5では「海水の作用を受けるコンクリート」と呼ばれています。
🧪 海水による劣化の種類とメカニズム
海水の影響によるコンクリートの劣化は、主に以下の3つに分類されます:
- 塩化物イオンの浸透による鋼材の腐食(塩害)
- 海水成分との化学反応によるコンクリート自体の劣化(化学的浸食)
- 波浪・凍結融解などの物理的作用による劣化
📍 構造物の位置と劣化の関係
海水の影響を受ける鉄筋コンクリート構造物では、位置(高さ)によって劣化の程度が大きく異なります。 特に「干満帯」や「飛沫帯(波しぶきを受ける範囲)」は、乾湿の繰り返しや酸素の供給を強く受けるため、化学的・物理的な劣化が最も激しくなる領域です。

⚗️ 海水の化学的作用(有害な塩類とその影響)
海水に含まれる塩類は、コンクリート中の水酸化カルシウム \(\text{Ca(OH)}_2\) と反応し、組織を破壊します。
〇硫酸マグネシウム(\(\text{MgSO}_4\))
\(\text{Ca(OH)}_2\) と反応し、二水石こうや水酸化マグネシウムを生成します。これにより体積膨張が生じ、ひび割れを引き起こします。
〇塩化マグネシウム(\(\text{MgCl}_2\))
\(\text{Ca(OH)}_2\) と反応し、水溶性の塩化カルシウムを生成します。これが溶け出すことでコンクリートの組織が多孔質化し、劣化が進行します。
配合と材料の選定
🧱使用されるセメント
一般的には高炉セメントB種や普通ポルトランドセメントが使用されますが、より高い耐久性を確保するためには以下のセメントが有効です。
- C₃A(アルミン酸三カルシウム)含有量の少ないセメント
中庸熱・低熱ポルトランドセメントなどは、硫酸塩に対する抵抗性が高くなります。 - 水酸化カルシウムの生成量が少ないセメント
高炉セメントやフライアッシュセメントなどの混合セメントは、塩化物イオンの浸透を抑制し、化学的浸食にも強い特徴があります。
※ただし、これらは長期強度に優れる一方で「初期強度が低い」ため、十分な湿潤養生が必要です。
⚙️ 配合に関するポイント
※各項には、コンクリート標準示方書【施工編】2017年制定の表を参考に掲載しています。
水セメント比(W/C):
- 海水環境では組織を密実にするため、水セメント比を小さくすることが重要です。標準示方書およびJASS 5において、厳しい最大水セメント比の基準が定められています。


単位セメント量
- 劣化が激しい飛沫帯・干満帯の構造物を守るため、「最小単位セメント量」の基準が設けられています。(例:飛沫帯・干満帯では原則として 330 kg/m³ 以上)

空気量
- 塩化物の影響で耐凍害性が低下しやすいため、適切な空気量(一般に 6.0%、W/C 45%以下の場合はさらに細かな規定あり)を確保することが推奨されます。

設計および施工上の留意点
🧩設計上の留意点
かぶり厚さの確保
- 塩化物イオンの侵入から鉄筋を守るため、通常よりも十分なかぶり厚さを確保する必要があります。JASS 5では「最小かぶり厚さ+15mm」を設計かぶり厚さの基準としています。
ひび割れ幅の制限
塩分の侵入を防ぐため、ひび割れ幅には厳しい制限があります。
- 標準示方書(RC構造): 0.5mm以下、または \(0.005c\)(\(c\) = かぶり厚さ)
- JASS 5:0.2mm以下
- PC構造物では、ひび割れの発生を許容しないことが本です。
🛠️施工上の留意点
- 打ち継ぎ目は極力避ける:
打ち継ぎ目は弱点になりやすいため、特に「満潮位から上60cm 〜 最低潮位下60cm」の干満帯には打ち継ぎ目を設けないよう、連続打設することが推奨されています。 - 養生期間の確保:
打込み直後のコンクリートが海水に洗われると品質が著しく低下します。普通ポルトランドセメントを使用する場合、打込み後5日間は海水に洗われないように保護(養生)する必要があります。

