2023年改訂のコンクリート標準示方書【施工編】では、レディーミクストコンクリートの圧縮強度の目標値の定め方について、統計的な考え方がより明確に示されました。
ここでは、試験でも頻出となる「合格判定基準」や「統計的リスク」の考え方を解説します。
1. 合格判定基準値と2つのリスク(消費者危険と生産者危険)
合格判定基準値を定める際には、JIS Z 9003に基づく計量抜取検査の考え方により、以下の2つのリスク(確率)を考慮する必要があります 。
- 消費者危険(不良率):受け入れたくない品質のロットが合格と判定されてしまう確率 。つまり、施工後に構造物が強度不足となる発注者側のリスクです。
- 生産者危険:受け入れたい品質のロットが不合格と判定されてしまう確率 。つまり、本当は問題ない生コンなのに不合格にされる工場側のリスクです。
今回の改訂では、検査基準(不良率の設定)はそれぞれの発注者の判断に委ねられる形となりました 。
💡 管理人の試験対策ワンポイント
試験ではこの「消費者危険」と「生産者危険」の定義を入れ替える引っかけ問題がよく出ます!
消費者=発注者が泣きを見るリスク、生産者=生コン工場が泣きを見るリスク、とイメージしておきましょう。
2. 呼び強度の指定方法(特性値か?合格判定基準値か?)
示方書では、施工に用いるコンクリートの強度の目標値が、実際の配合強度より低くならないように配慮されています 。 そのため、レディーミクストコンクリートを購入する際、呼び強度の強度値には「特性値」ではなく、「合格判定基準値」を指定することが標準とされています 。
3. 圧縮強度の目標値を定める式(概要)
標準示方書では、統計的な手法を用いて圧縮強度の目標値を算出する式が示されています。数式アレルギーの方も多いと思いますが、以下の関係性を押さえておきましょう。
(※ \(V\) は変動係数、\(n\) は試験回数、\(\alpha\) は生産者危険を表します)
■ 試験値の平均値
$$f’_{avg} = \frac{1}{1 – 1.645V} \cdot f’_{ck}$$
■ 合格判定基準値(生産者危険 \(\alpha\) を考慮)
$$f’_{cn} = \left(1 – \frac{K_{\alpha}V}{\sqrt{n}}\right) \cdot f’_{avg}$$
■ 圧縮強度の目標値
$$f’_{cr} = \frac{1}{1 – \frac{3V}{\sqrt{n}}} \cdot f’_{cn}$$
■ 割増し係数(配合設計時に使用)
$$割増し係数 = \frac{1}{1 – \frac{3V}{\sqrt{n}}} \cdot \frac{1 – \frac{K_{\alpha}V}{\sqrt{n}}}{1 – 1.645V}$$
【設計時の参考値】
試験回数 \(n=3\)、変動係数 \(V=10\%\)、生産者危険 \(\alpha=10\%\) (このとき \(K_{\alpha}=1.282\))の場合、
割増し係数 \(≒ 1.34\) となります。
品質管理・品質検査において、統計の理解は避けて通れません。
当ブログの関連記事として、ぜひ以下のページもご参照ください。
👉 第10章:コンクリートの製造と品質管理
👉 第5節:正規分布と品質管理
土木学会標準示方書

以下は、2023年制定土木学会コンクリート標準示方書【施工編】に掲載されている内容です。かなり難しい式が並んでいますが、式の暗記は私の場合不可能です。
式には、JISで定めている「1回の試験値とは、3本の供試体の平均値であること」、消費者危険、生産者危険が導入されている。ここがポイントだと思っています。
1回の試験値が特性値を満足しない確率が5%となる分布の平均値\(f’_{avg}\)は、式(解4.3.1)で表される。圧縮強度の試験値とは、同一バッチから採取される3本の供試体の圧縮強度の平均値のことである。
\(f’_{avg}\)=\(\frac{1}{{1-1.645V_1}}\)\(\cdot f’_{ck}\)(解4.3.1)
ここに\(f’_{ck}\):圧縮強度の特性値
\(V_{1}\) :変動係数(=標準偏差\(\sigma_{1}\)/平均値\(f’_{avg}\))試験回数が \(n\)回のとき、生産者危険を\(\alpha\)%とし、標準正規分布において上側確率が\(\alpha\)%となる点を\(K_{\alpha}\)とすると、合格判定基準値\(f’_{ck}\)は、式(解4.3.2)で表される。
\(f’_{cn}\)=(1-\(K_{\alpha}\) \(V_1\)/\(\sqrt{n}\))\(\cdot f’_{avg}
=\frac{1-K_{\alpha}V_1/\sqrt{n}}{1-1.645V_1}\cdot f’_{ck}\) (解4.3.2)検査に合格とならない確率を0.135%となるように圧縮強度の目標値\(f’_{cr}\)を定めると、圧縮強度の目標値\(f’_{cr}\)は、式(解4.3.3)となる。
\(f’_{cr}=\frac{1}{1-3V_0/\sqrt{n}}\cdot f’_{cn}
=\frac{1}{1-3V_0/\sqrt{n}}\cdot\frac{1-K_{\alpha}V_1/\sqrt{n}}{1-1.645V_1}\cdot f’_{ck}\) (解4.3.3)
ここに、\(V_0\) :変動係数(=標準偏差\(\sigma\)/目標値\(f’_{cr}\))変動係数\(V_0\)および\(V_1\)は等しく、\(V\)とすれば、割増し係数は、式(解4.3.4)で表される。
\(割増し係数=\frac{1}{1-3V/\sqrt{n}}\cdot\frac{1-K_{\alpha}V/\sqrt{n}}{1-1.645V}\)(解4.3.4)
ここに、\(V\) :圧縮強度の変動係数(=標準偏差\(\sigma\)/目標値\(f’_{cr}\))
\(K_{\alpha}\):検査計画書に示される生産者危険を\(V\)としたとき、標準正規分布において上側確率が\({\alpha}%\)となる点
配合設計時においては、\(n\)は3、変動係数\(V\)は、10%としてよい。また、検査計画書に示される生産者危険\({\alpha}%\)が10%の場合、\(K_{\alpha}\)は、1.282となり、割増し係数は、1.34になる。
出典:土木学会:2023年制定 コンクリート標準示方書【施工編】 59~60P
統計の重要性と参考文献

品質管理・品質検査において、統計の理解は避けて通れません。
以下の文献も参考になります:
町田篤彦”コンクリートの品質管理及び品質検査と統計の関係”コンクリート工学
(当時の基準に基づいて書かれていますので、ご留意願います。)
また、当ブログの関連記事として、以下もぜひご参照ください。受験対策として最低限押さえておきたい統計の知識をまとめています。
👉 第10章:コンクリートの製造と品質管理
👉 第5節:正規分布と品質管理
もぜひご参照ください。受験対策として最低限押さえておきたい統計の知識をまとめています。



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